受理番号:陳情第3号
湊川上流域に立地する産業廃棄物処分場の漏洩対策の徹底と漏洩中の処分場の上に増設される拡張計画に反対する陳情書
<要 旨>
大平興産株式会社が、第二漏洩処分場の上に増設する「第三処分場の拡張申請」を許可しないことを知事に求める意見書を、千葉県知事宛に提出していただきたく陳情いたします。
<理 由>
1 当処分場の位置する場所は、湊川の支流高宕川上流部に位置し、処分場の規模が大規模であり、年間処理水の放流量は10万トンを超える水量が浦賀水道に流出していますB
かって遡上したアユは高宕川にみられなくなり、放流口直下の地獄沢では水生昆虫などが激減しています。放流水の塩化物イオンや電気伝導率が高いため千葉県に対応を求めましたが改善はされていません。
2 今年6月、処分場放流口の下流の川の水をポンプアップして米を作っている住民の田圃の稲の生育に異常が見られました。田圃の土の表面が赤くなり、稲の根が付かず、実の入らない状態となり現在富津市の農林水産課、環境保全課に相談し調査中です。2009年、同放流水を採水して稲籾の発芽と生育状況を観察したところその影響が判明していますB
3 2006年8月、大平興産の第二処分場は観測井戸から高濃度の塩化物イオンが漏洩して、県から原因究明、対策を求められ、2年間搬入を停止しました。第二処分場は遮水シートがなく不透水性の岩盤を利用して作られ、漏洩の原因は火山灰層(Kd38)を通じて保有水が漏れたとし、干葉県は省令の定める不透水性岩盤ではなかったことを認めました。燃えがら・汚泥・廃プラスチックなど120万トンの廃棄物の保有水漏洩対策については、暫定的な対策として揚水対策が行われました。
4 第三処分場は2004年9月、埋め立て容量95万m3で申請しましたが、2006年8月第二処分場の漏洩が発覚し負荷がかからないようにするため千葉県は第二処分場の上に載せないようセットバックして、規模も約32万m3に縮小し変更申請を許可しました。2011年10月、事業者は第三処分場の拡張申請をしましたが、千葉県は「漏洩が続いていることは無視できないとして」申請を受理しませんでした。
2012年9月、事業者は「追加対策工事」を開始しました。
2013年5月、私たちは千葉県に追加対策工事について地元説明会を求めワしたが、県は「追加対策は事業者が説明すべきもの、県はそれを評価する立場にある」として地元説明会を拒否しました。事業者は、2013年6月11日第三処分場増設計画を申請し、千葉県は受理しました。県に抗議すると「受理したが追加対策の検証は行う」「許可になるかどうかはわからない」と答えました。
追加対策の内容は「仕切り壁設置」「火山灰層への遮水シート敷設」「目詰まり」の3つとしています。 地質学の専門家は、この対策について次のようにコメントしています
●「遮水壁の設置について、廃棄物層を貫通して基底の泥岩層の中に数メートル以上打ち込まなければ効果は出ないが矢板先端部の衝撃によって基盤岩に亀裂が生ずることは避けられず、この亀裂が新しい水みちとなって汚染水が漏れ出すおそれが大きい」
●「遮水シート敷設について、局部的に遮水シートを貼ってもその後の作業に伴うズレ歪みの発生は避けられず安定した遮水性の確保にはつながらない、シートを貼るならば廃棄物を移動させながら全面張り込みをしなくては意味がない」
●「目詰まりについては、遮水性の確実な向上を目指すのであればセメントミルクを圧入する、本格的なグラウテイングの施行に踏み切るべきである」と指摘しています。
このことから「追加対策」によって本当に漏洩が止まるのか懸念があります。重要なことはその工事後の徹底した検証にあります。千葉県は工事が完了するには「相当の期間が必要」としています。しかし事業者の増設計画では埋め立て開始期間が平成26年7月31日〜平成38年7月31日(12年間)とされており十分な検証が行われるか懸念があります。現在、検証は行われておらず、漏洩対策の徹底した検証のため公正な第三者機関も加わって行われるよう要望いたします。
5 大塚山処分場への8,000ベクレル/kgまでの放射性廃棄物の搬入は地元住民に説明も無く行われました。法的に管理型産廃処分場は放射性廃棄物を長期間にわたって管理出来る施設ではなくその処理能力もありません。漏洩対策中の第二処分場の上に更に第三処分場を拡張し放射性廃棄物を搬入することは将来長期にわたり空気汚染・水汚染の危険があり、湊川周辺のみならず富津市民の農業・漁業・市民生活の安心安全を損なうものです。放射性廃棄物の管理型処分場搬入の中止を求める署名は天羽地域で4,300筆、近隣4市で32,500筆が千葉県知事に提出されています。
湊川は、高宕山山系を水源地帯として、湊の市街を経て東京湾に注ぐ県内有数の意義ある川であります。湊川は、地域一帯の農業用水の水源であり、また「アユの放流をしている湊川漁業組合や河口付近の海苔の養殖をおこなっている漁民にとってはまさに「命の川」であります。現在は停止をしておりますが、湊川は飲料水の水源であり将来の再利用を考えますと公共用水として絶対に維持管理していかなければなりません。
事業者の大平興産(株)の埋め立て廃棄物は「汚泥、燃え殻、ばいじん、建設廃材」等で重金属などの有害物が含まれることが充分に予想されます。
現在大塚山産業廃棄物処分場の排水口下の沢では、水生昆虫がいなくなっています。「アユ」も高宕川に上がらなくなっています。水源地帯に産業廃棄物場をこれ以上拡張することは、湊川流域の生態系の破壊、地域の産業・文化を破壊することになります。